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『嫌われる勇気』がおかしいと感じたあなたへ|「トラウマはない」の何が間違っているのか

2026 7/03
家庭と育ち
2026年6月29日2026年7月3日
PR本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。また、筆者の体験に基づく一般的な情報であり、医学的な診断や助言ではありません。

『嫌われる勇気』を読んで、どこか腑に落ちなかった。むしろ、責められた気がした。

もしそう感じたなら、その感覚は間違っていない。私もそうだった。この記事は、あの本のどこが「片側だけ」なのかを、私自身の体験から、できるだけ淡々と書く。

目次

アドラーは何を言っているのか

アドラー心理学は「目的論」という立場をとる。人の行動は、過去の原因ではなく、いまの目的によって決まる、という考え方だ。

ここから、あの有名な一文が出てくる。「トラウマは存在しない」。

正確に言えば、「トラウマが痛くない」と言っているのではない。いまのあなたの行動は、過去のトラウマによって決定されてはいない。経験にどんな意味を与えるかは、あなたが今ここで選んでいる——そういう主張だ。

だから、人とうまくいかないのも、外に出られないのも、過去のせいではなく「あなたが今、そうあることを選んでいる」。あとは嫌われる勇気を出せばいい。少なくとも、私にはそう読めた。

理屈としては、わかる。これで前に進める人もいるだろう。だから売れたのだとも思う。

でも、それは時間の片側しか見ていない

ここから私の考えだ。

因果には方向が二つある。いまの目的から行動を見る方向と、過去の原因から結果を見る方向。アドラーは前者だけを採り、後者を「言い訳」として切り捨てた。

でも、原因は実在する。

幼いころ、大人の機嫌に左右される家庭で育つと、脳の使い方そのものがねじ曲げられることがある。発達性トラウマや愛着の傷は、その後の人生に長く作用する。気休めの話ではなく、近年ようやく、少しずつ知られるようになってきた領域だ。

ここで一番こたえるのは、こういうことだ。当事者は、その原因に気づけない。だって、これが当たり前だと思っているんだから。

私自身、長いあいだ「自分は発達障害なんだ」と思っていた。愛着だとは、正直、思いもしなかった。緊張した家庭で育ったことが今の自分を作っている、という発想自体がなかった。当たり前すぎて、原因として見えないのだ。

目的論は、その見えない原因を、本人ごと「言い訳」として処理する。原因の実在を否定されると、当事者は気づくきっかけまで奪われる。これが片側だけの理論の、いちばん罪深いところだと思う。

「今すぐ変われる」が成立しない体

過去は関係ない、今この瞬間から変われる。本のメッセージはそこへ向かう。私の体は、そうなっていない。

私はいつでも不安で、いつでも緊張している。恥ずかしがりとか、人見知りとか、そういう言葉では全然足りない。心のかなり大きい部分が、苦痛に覆われている。

たとえば職場で、後ろの席の人のため息が増える。相手の事情だと頭ではわかっている。それでも「自分のせいでイラついているんじゃないか」へ、勝手にすり替わっていく。普通は気にしなくていいで済む。わかっている。わかっているけど、体がそうなっちゃうんだ。

これは勇気が足りないのではない。脳にできあがった回路が、意志より先に反応する。意志で上書きできる速さではない。今すぐ選び直せと言われて選び直せるなら、誰も何年も迷わない。

「わがまま」と言われる側から

学生のころ、毎日が地獄のように苦しいと、勇気を出して友人に言ったことがある。返ってきたのは「俺も高校のとき、学校の空気が合わないことあったよ」だった。

それも辛かったのだろうとは思う。でも、私の「常に休まる感覚がなく、毎日緊張している」とは、まるで違う。健常な人の話だ。なのに「わかる」と寄り添ってくる。わかったふりは、人の尊厳に照らして、ちょっと失礼だと思う。

回避型の人間が、毎日人に気を遣って生きていると、一人の空間を奪われることが、当時はほとんど死を意味していた。社会的に見たらわがままに映るのは、わかっている。でも、わがままじゃないんですよ。

アドラーの言葉は、ときどき、この「健常な人が言うわかる」とよく似た音がする。前向きで、正しくて、こちらの実態には届いていない。

では、どうすればいいのか

誤解しないでほしいのは、私は過去のせいにして止まっていろと言いたいのではない。過去の原因を見るのは、止まるためではなく、正しく扱うためだ。

発達性トラウマや愛着障害は、本当に闇が深い。この苦しみは、体験している人にしかわからないところが多分にある。被害者ぶりたいのではない。本当に苦しいから書いている。

だからこそ、ここだけは言える。もう一冊の自己啓発本では、たぶん変わらない。今すぐ変われと書いてある本を何冊読んでも、回路は反応し続ける。原因に向き合う作業は、独力ではきつい。専門の人と、時間をかけてやることだ。

まず、自分の対人パターンを知るところからでいい。私は愛着障害チェックリストを見て、ほぼ全項目に当てはまって愕然とした。私にとっては、そこが入口だった。

誰かに話を聴いてほしいと思ったら

家庭や育ちの問題は、友人に話しても理解されにくい。だからこそ、利害のない専門家に話すことから始めてほしい。私自身、自分の感覚を「それは正常だよ」と言ってもらえただけで、ずっと楽になった経験がある。”自分は異常者ではないか”という本丸は、近い人には言えなくても、遠い専門家になら、少しずつ出せる。

専門家に「話す」ことから始めたい人へ

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眠れない・気持ちが沈んで動けない人へ

原因に向き合う前に、もう体に症状が出ているなら、カウンセリングより先に、医師の診察を考えたほうがいい。眠れない、食べられない、動悸が止まらない。そこまで来ているなら、なおさらだ。

症状が出ている人・通院がしんどい人へ

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最後に

なぜ自分だけ、こうなったのか。

そもそも、家庭は外から中が見えない。ヨソはヨソ、ウチはウチ。隣の家の食卓も、その家の親子のあいだに流れる空気も、こちらからはわからないし、向こうからもわからない。だから誰も、お互いの家庭を本当には比べられない。

比べられないから、自分の家の当たり前を、当たり前のまま疑えない。私が愛着という言葉にたどり着くのに長くかかったのも、半分はこれだと思う。緊張した家で育ったことが今の自分を作っている、なんて、比べる相手がいなければ気づきようがない。

それでも、原因がなかったことにはならない。私から「あなたも同じだ」とは言わない。同じかどうかは、あなたが決めればいい。ただ、『嫌われる勇気』を読んで責められた気がしたのなら、その感覚は、たぶん正しい。


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この記事は筆者の個人的な体験に基づくものであり、医学的・心理学的な診断や助言を目的としたものではありません。家庭や心の問題でお悩みの方は、カウンセラーや心療内科、法テラス(0570-078374)、よりそいホットライン(0120-279-338)などの専門窓口にご相談ください。

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