お金の管理ができない。通帳を見るのが怖い。何に使ったか思い出せないのに、残高だけが減っている。
僕はADHD当事者で、あるとき自分の「無駄遣い」を数えてみたら、思い出せる範囲だけで約80万円あった。使っていないルンバ、弾けない楽器、なくしたイヤホン。笑ってほしい。でも笑ったあとに、たぶんあなたの部屋にも同じ物があると思う。
先に結論を言っておく。僕のお金の管理を変えたのは、家計簿でも節約の決意でもなかった。意思力をあてにするのをやめて、構造を変えた。この記事では、80万円の内訳を恥ずかしげもなく公開したうえで、僕に実際に効いた方法だけを書く。
僕がお金の管理でやらかした「浪費五重奏」80万円の内訳
ADHDの浪費には型がある。僕の場合、5パターンに全部当てはまっていた。実額と一緒に並べる。
| 型 | 僕の実例 | 失った額 |
|---|---|---|
| ①短期報酬に飛びつく | コンビニ通いが習慣化。月6,000〜7,000円が当たり前になっていた | 年約8万円ペース |
| ②同じ物を何度も買う | 引っ越しで開封済みティッシュが5箱発掘された | 少額×無数 |
| ③なくす | ワイヤレスイヤホン4個。全部壊れていない状態のまま消えた | 約6万円 |
| ④壊す | ノートPCの液晶、積んだ荷物の崩落でドア修理 | 実損3〜4万円+PC代 |
| ⑤欲しいと我慢できない | 弾かない電子ピアノ6万・弾けないギター2本で十数万・ベース7万・床に物があるのにルンバ最新型26万・ビジネスマンでもないのにダンヒルの革バッグ15万 | 約70万円 |
⑤が僕の代表作だ。楽器だけで30万円近くある。買った瞬間の「これで人生が変わるかもしれない」という高揚は本物なのだ。ただ、変わったのは部屋の床面積だけだった。
②③④は「散らかった部屋」とセットの浪費で、この顛末はADHDで片付けられない|部屋が汚いのは性格じゃなくて脳の特性だったに詳しく書いた。部屋とお金は、僕の中では同じ問題の表と裏だ。
なぜお金の管理ができないのか──僕なりの分解
「だらしない性格だから」で片付けると、対策が「頑張る」しかなくなる。僕は自分の浪費を観察して、こう分解した。あくまで僕の場合の話だ。
- 短期報酬が強すぎる ── 目の前の「今すぐ気持ちいい」が、1ヶ月後の請求より重い。金額の大小ではなく、時間の距離で価値が決まってしまう
- 買った時点で満足する ── 楽器もルンバも、手に入れた瞬間に脳内では「もう弾ける自分」「もう片付いた部屋」が完成している。だから実物は使われない
- 長期コストが計算に入らない ── 月々の固定費は「見えないお金」になる。携帯代もサブスクも、痛みがないから見直しの優先度が永遠に上がらない
つまり僕の浪費は、「時間とお金の換算が苦手な脳」がそのまま出た結果だった。だとすれば、変えるべきは性格じゃない。換算のやり方と、お金の通り道そのものだ。
意思力で6年動けなかった僕が「構造」で変えた話
ここからが本題だ。僕に効いた順に3つ書く。
①×30・÷30の脳内換算──毎日の買い物を「月額」で見る
毎日買う120円のコーラは、僕の脳内では「120円の買い物」だった。これを「月3,600円のサブスクを契約しますか?」と自分に聞き直す。逆に、月額の大きい出費は÷30して日割りにする。この換算を挟むだけで、ADHDの脳でもコスト感が正確に掴めるようになった。
効果は実測済みで、昔は月6,000〜7,000円使っていたコンビニが、今は行っても月2,000円くらい。それだけで年7万円強が浮いた計算になる。我慢はしていない。換算しただけで、自然に手が止まるようになった。
②固定費の構造改革──1回の手続きが、毎月勝手に節約してくれる
節約術の多くは「毎日の我慢」を要求してくる。ADHDの僕に毎日の我慢は積み上がらない。でも固定費の見直しは違う。1回だけ手続きをすれば、あとは何もしなくても毎月自動で節約され続ける。これはADHD向きの数少ない節約だと思う。
僕の実例が携帯代だ。ソフトバンクの無制限プランからahamoに乗り換えて、請求は月6,254円→5,055円になった(いずれも当時の実際の請求額。機種代は除く)。月あたり約1,200円、年で約14,400円の削減。金額の詳細と、乗り換え手続きが実は30分で終わった話はスマホ乗り換えに6年かかった僕の先延ばし対策に書いた。
白状すると、僕はこの乗り換えに6年かかった。月1,200円×6年=約8万6,000円を、動けないまま払い続けた。「ADHDだから手続きを後回しにしてたんでしょ」と思われそうだけど、実際は違って、「変わることの怖さ」の方が強かった。「格安って遅いんじゃないか」「使いにくくなったら仕事に響く」という不安で、今の環境を壊せなかった。実際に乗り換えてみたら、地下鉄で何度か途切れる程度で仕事にも支障はない。僕は6年間、月1,200円を「怖さ」に払い続けていたことになる。
もう一つ、乗り換えて気づいたことがある。大きいプランを払っていた頃、その回線で僕が見ていたのは、SNSの炎上や誰かの揚げ足取りだった。脳の報酬系を上手にくすぐってくる、短期報酬の塊みたいな消費だ。僕の脳は、ここに本当に弱い。固定費の見直しは、節約というよりお金の行き先を「脳をハックしてくる消費」から「自分のためになるもの」へ付け替える作業だと、今は思っている。
僕と同じ「変わる怖さ」で固定費が高止まりしている人へ
この記事を読んでいる時点で、固定費の見直しを大なり小なり考えているということだと思う。だったら候補を眺めるだけでも今日やっておくと、「後回しの海」に沈まない。料金や条件は必ず公式サイトで確認を。
→ 携帯代:
楽天モバイルなどの格安プランを見てみる
→ プロパンガスの戸建て住まいなら:ガス屋の窓口で料金診断(無料・賃貸の人は対象外なので注意)
③守りの家計──「打線は水物、守備は計算が立つ」
野球の落合博満監督は、打線は水物でピッチャーと守備こそ計算が立つ、という考えで守りからチームを作り、監督を務めた8年間すべてAクラス、リーグ優勝4回という成績を残した。これを家計に翻訳すると、得点=収入は水物、失点=支出は計算が立つ、になる。
収入を増やすのは運と時間がかかるけど、支出は今日の手続きで確実に減らせる。ADHDで「稼ぐ力はあるのにお金が残らない」タイプの人ほど、攻めより先に守備を固める方が計算が立つ。僕は固定費の見直しと×30換算という「守備」を入れてから、初めてお金が残るようになった。
買い物の前にはもう一つだけ関門を足した。「これは快楽・ご褒美・トレーニング・仕事の知見・富を生むもののどれに払うのか」を自分に聞く。どれでもなければ買わない。買ったなら、あとで「目的は履行されたか」をチェックする。ルンバも楽器も、この関門があれば買っていなかったと思う。
今日からできるADHDのお金管理チェックリスト
- 毎日買っている物を1つ選んで、×30して「月額」に直してみる
- 携帯の請求額を今月だけ確認する(見るだけでいい。僕はこれで6年ぶりに動けた)
- 固定費の見直し候補を1つだけブックマークする(申し込まなくていい。後回しの海に沈む前に入口だけ確保する)
- 次に何か欲しくなったら「快楽・ご褒美・トレーニング・知見・富」のどれか自問する
- 家計簿はつけなくていい(記録が続くタイプの人はつけていい。僕は記録より先に、記録が要らない構造を作った)
よくある質問
Q. ADHDの人はお金の管理ができないんですか?
人によります。ただ、短期報酬を優先しやすい特性がお金の使い方に出る人は多く、僕はその典型でした。「できない」のではなく「意思力頼みの管理法が向いていない」だけで、仕組みを変えたら僕でもお金が残るようになりました。
Q. お金を使いすぎてしまうのはなぜですか?
僕の場合は「今すぐの気持ちよさ」が「1ヶ月後の請求」より脳内で重かったからです。金額の大小ではなく時間の距離で価値が決まってしまうので、×30換算で時間の距離を潰すのが効きました。
Q. お金に執着してしまうのもADHDの特性ですか?
断定はできません。僕の実感では、浪費で残高が減る→不安になって残高を何度も確認する→不安を消すためにまた買い物する、というループが「執着に見える状態」を作っていました。浪費側を構造で止めたら、執着側も自然に軽くなりました。
Q. ADHDでもお金を貯める方法はありますか?
僕に効いたのは、①固定費を1回の手続きで下げる(毎月自動で貯まるのと同じ)②×30・÷30換算で買い物の関門を作る③守りの家計に徹する、の3つです。毎日の我慢を前提にした方法は、僕は全部続きませんでした。
Q. ADHDだと障害年金はもらえますか?
この記事は日常のお金の管理の話で、障害年金の受給要件は扱っていません。受給できるかどうかは個別の状況によるので、年金事務所や市区町村の窓口、社会保険労務士など専門窓口に相談してください。
部屋が片付かないのも、同じ構造だった
最後に一つ。僕の場合、お金の管理と部屋の散らかりは完全に地続きだった。「見えない物は存在しない」からティッシュを5箱買い、イヤホンを4個なくし、床が物で埋まっているのにルンバに26万円払った。お金の問題を数えていくと、途中から必ず部屋の問題にぶつかる。部屋側の実録と、僕に唯一効いた「片付けずに減らす」方法はADHDで片付けられない|部屋が汚いのは性格じゃなくて脳の特性だったに書いた。
80万円は返ってこない。でも、あれを「性格のせい」にして自分を責め続けるのはやめた。構造を1個ずつ変えたら、僕でもお金は残るようになった。あなたの80万円が、まだ財布にあるうちに。
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この記事は筆者の個人的な体験に基づくものであり、医学的・心理学的な診断や助言を目的としたものではありません。記載の金額は筆者の実体験当時のものです。料金・プラン内容は変わるため、契約前に各公式サイトでご確認ください。ADHDの症状や治療については医療機関へご相談ください。


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