こんにちは。ADHD傾向のあるフリーランス・30代男性の筆者、アデハデマン(アデハデ)です。
「就労移行支援はやめとけ」――。発達障害の傾向を指摘され、これからの働き方を考えていたとき、ネットで何度もこの言葉を目にしました。私自身、正社員を2年で辞め、フリーランスになったものの収入が激減し、スキマバイトで食いつなぎながら「次の選択肢」を本気で探していた時期があります。そのとき真剣に調べたのが、この「就労移行支援」という制度でした。
結論から言うと、「やめとけ」という声にはもっともな理由がある一方で、合う人にとっては非常に価値のある制度でもあります。この記事では、私が制度を調べて分かった「やめとけと言われる理由」「向いていない人・向いている人」「選ぶときのチェックポイント」を、公的な情報の出典を示しながら整理していきます。
なお、はじめにお断りしておきます。私自身は就労移行支援を利用した経験はありません。あくまで「正社員を辞めたあと、次の選択肢として制度を本気で調べた当事者」の立場で書いています。利用体験そのものではなく、調べて分かった事実と、当事者として感じたことをお伝えする記事だとご理解ください。
そもそも「就労移行支援」とは?まず制度の中身を確認
「やめとけ」の良し悪しを判断する前に、制度の中身を正確に押さえておきましょう。ここを誤解したまま「やめとけ」「やめとくな」と論じても、的外れになってしまいます。
就労移行支援とは、厚生労働省が定める障害福祉サービスのひとつで、一般企業への就職を希望する障害のある人が、就職に必要な知識やスキルを身につけ、職場探しや就職後の定着支援を受けられる制度です。発達障害も対象に含まれます。
- 対象者:一般就労等を希望し、適性に合った職場への就労が見込まれる障害者(身体・知的・精神障害=発達障害を含む・難病など)。原則として18歳以上65歳未満。
- 標準利用期間:原則2年間。
- サービス内容:事業所内での作業や実習を通じた就労訓練、適性に合った職場探し、就職後の職場定着のための支援など。
これらは厚生労働省の資料「就労移行支援について(厚生労働省)」に基づく内容です。制度を検討する際は、必ず一次情報も確認することをおすすめします。
ポイントは、就労移行支援は「働く場」ではなく「就職するための訓練を受ける場」だという点です。この前提を押さえておくと、後述する「給料が出ない」という話の意味がすっと理解できます。
「就労移行支援はやめとけ」と言われる4つの理由
ここからが本題です。なぜ「やめとけ」と言われるのか。私が調べてたどり着いた、代表的な4つの理由を正面から整理します。どれも事実に基づいた、もっともなデメリットです。
理由1:原則として「給料(工賃)」が出ない
これが「やめとけ」の最大の理由だと感じました。就労移行支援は前述のとおり「訓練を受ける場」であるため、原則として給料や工賃は支払われません。
一部の事業所では訓練として行った作業に対してわずかな工賃を支払うケースもありますが、それも最低賃金に満たない少額であることがほとんどです。参考までに、厚生労働省の調査による令和4年度の就労移行支援の平均工賃(月額)は16,841円とされています(多くの事業所では工賃そのものがありません)。
つまり、通っている間は基本的に収入がないということ。生活費を稼ぎながら通うことは想定されていない制度なので、「働いてお金を得たい」という人にとっては、ここが大きなハードルになります。お金を得たい場合は、賃金・工賃が発生する「就労継続支援A型・B型」という別の制度が選択肢になります。
理由2:利用は原則「2年」まで――時間の制約がある
就労移行支援の標準利用期間は原則2年間です。この2年という区切りは、人によってはプレッシャーになります。
「2年通えば必ず就職できる」わけではなく、「2年という限られた時間の中で、就職という結果を出すことが前提」の制度だからです。途中で体調を崩したり、自分に合わない事業所だったと気づいて時間を浪費したりすると、残り時間がどんどん削られていく。この「時間が有限である」という構造が、向いていない人にとっては重荷になり得ます。
理由3:事業所の「当たり外れ」が大きい
調べていて一番怖いと感じたのが、これです。就労移行支援を運営する事業所は全国に数多くありますが、その支援の質や雰囲気、得意分野は事業所ごとに大きく異なります。
就職実績を丁寧に出している事業所もあれば、そうでないところもある。プログラムの内容、スタッフとの相性、通っている人の雰囲気――合わない事業所を選んでしまうと、貴重な2年間を有効に使えません。「就労移行支援はやめとけ」という声の一部は、おそらく「合わない事業所に当たってしまった人」の実感から来ているのだろうと、私は推測しています。制度そのものというより、事業所選びの失敗がこの評判に影響している面があると感じます。
理由4:「通所」そのものが負担になる人がいる
就労移行支援は、決まった日時に事業所へ通うのが基本です(近年は在宅支援を取り入れる事業所もありますが、原則は通所です)。
ここが、私のようなタイプには引っかかりました。私はもともと、決まった場所・時間に通うことや継続的な人間関係に強いストレスを感じてフリーランスに転身した人間です。就職に向けた生活リズムの訓練という意味では通所に価値があるのは理解できますが、「毎日決まった時間に通う」こと自体が苦痛な人にとっては、それ自体が高いハードルになります。「やめとけ」と言いたくなる気持ちも、ここは正直よく分かりました。
それでも「就労移行支援が向いている人」の条件
ここまでデメリットを正面から並べましたが、それでも就労移行支援が「強力な味方」になる人は確実にいます。調べた結論として、次のような条件に当てはまる人には向いていると感じました。
- 通所期間の生活費に、ある程度めどが立っている人。給料が出ない前提なので、貯金・家族の支援・障害年金・各種手当などで当面の生活が成り立つなら、最大のデメリットを打ち消せます。
- 「一般企業への就職」を本気で目指している人。この制度のゴールは一般就労です。ゴールが一致しているほど、支援の価値を引き出せます。
- 独学・独力では就職活動が進まない人。応募書類、面接、職場探し、定着のフォローまで伴走してもらえるのは大きな利点です。ひとりだと動けないタイプの人ほど恩恵が大きいです。
- 決まった時間に通うことで、むしろ生活リズムを立て直したい人。通所が「苦痛」ではなく「リハビリ」として機能する人にとっては、これがプラスに働きます。
- 自分の障害特性を整理し、配慮を受けながら働く準備をしたい人。自己理解を深め、必要な配慮を言語化する練習ができるのは、就職後にも効いてきます。
「向いていない」のではなく「使えなかった」――私の場合
ここまで「向いている人・向いていない人」を制度の中身で分けてきました。でも、正直に書きます。私自身を振り返ると、私は「向いていない人」だったのではなく、「使えなかった人」だった――これが本当のところです。
制度のゴールがズレていたとか、通所が無理だったとか、もっともらしい理屈はいくらでも後付けできます。実際そういう面もありました。でも、いちばん奥にあった理由は、もっと情けないものでした。「福祉の世話になるのは、みっともない」。その感覚が、自分の中に染みついて離れなかったのです。
私が育ったのは、昭和の家父長制的な空気が色濃く残る家でした。弱音を吐くこと、人に頼ること、ましてや「福祉のお世話になる」ことは、家のなかで暗黙のうちに「みっともないこと」とされていた。口に出して言われたわけではなくても、その価値観は空気のように家中に満ちていて、いつのまにか私自身の物差しになっていました。
だから私は、自分の発達の傾向のことも、就労移行支援のような制度のことも、「公に使う」という一歩がどうしても踏み出せなかったのです。制度を調べれば調べるほど、頭では「これは使える権利だ」と分かる。でも、「自分が障害福祉サービスを利用する」と想像した瞬間に、あの「みっともない」という声が胸の奥でブレーキをかける。向き不向き以前に、私はその踏ん切りをつけられなかった側の人間でした。
結局、私は就労移行支援に通うことを選びませんでした。代わりに、スキマバイト(タイミーなど)で食いつなぎながら、自分に合う働き方を少しずつ探すという道で、いまも立て直しの途中にいます。これは「制度より自分のやり方のほうが正しかった」という武勇伝ではありません。むしろ逆で、使える制度を、世間体のせいで自分から遠ざけてしまった――その遠回りの記録です。
だからこそ、同じように「制度のことは知っているけれど、なんとなくみっともない気がして使えない」というところで止まっている人に、これだけは伝えたいのです。世間体は「やめとけ」の理由にはなりません。就労移行支援を選ぶか選ばないかは、給料(工賃)が出ないこと・原則2年という期間・通所の負担といった制度の中身で判断してほしい。「みっともない」かどうかではなく、「自分の状況と制度のゴールが合うか」で決めてほしい。それができなかった側の人間だから、なおさら強くそう言えます。
ちなみに「決まった時間に通う/間に合わせる」のが苦手という話は、私の場合バイトの遅刻対策にも通じるテーマでした。そのあたりの実体験は「ADHDの人がバイトに遅刻しそうになる原因と対策」にまとめています。通所のハードルを具体的にイメージしたい方は、あわせて読んでみてください。
「やめとけ」を回避する――事業所を選ぶときのチェックポイント
ここまで読んで「自分には向いているかもしれない」と感じた方へ。「やめとけ」と言われる失敗の多くは事業所選びでつまずくことから来ている、というのが私の見立てです。最後に、調べたうえで「自分なら必ず確認する」と思ったチェックポイントを挙げておきます。
- 就職実績(就職率・定着率)を具体的に開示しているか。「就職できる」という抽象的な説明ではなく、数字や事例で示してくれるかを見ます。
- 自分の希望する職種・業界に強いか。事業所ごとに得意分野が違うため、ゴールと事業所の方向性が合っているかを確認します。
- 見学・体験ができるか、そのときの雰囲気が合うか。スタッフの対応や、通っている人の様子は、実際に足を運ばないと分かりません。複数の事業所を比較するのが鉄則です。
- 通所の負担(距離・通いやすさ・在宅対応の有無)が現実的か。続けられなければ意味がないので、無理のない通所が可能かを冷静に見ます。
- 利用料の自己負担額を事前に確認したか。利用料は世帯の所得に応じて決まります(後述)。自分のケースでいくらになるのか、市区町村の窓口や事業所に確認しておくと安心です。
補足:利用料は「払えない」とは限らない――所得に応じた負担の仕組み
「就労移行支援 利用料 払えない」と不安に思う方も多いようなので、ここも触れておきます。障害福祉サービスの利用料は世帯の所得に応じた負担(応能負担)で、月ごとの負担上限額が次のように区分されています。
- 生活保護世帯:負担上限月額 0円
- 低所得(市町村民税非課税世帯):負担上限月額 0円
- 一般1(市町村民税課税世帯・一定以下など):負担上限月額 9,300円
- 一般2(上記以外):負担上限月額 37,200円
これは厚生労働省「障害者の利用者負担(厚生労働省)」に基づく区分です。低所得世帯では負担上限が0円となるため、実際には多くの利用者が自己負担なし(無料)で利用しているとされています。「利用料が払えないから無理」と決めつける前に、自分がどの区分になるのか、まず確認してみることをおすすめします。最新かつ正確な金額・区分は、必ずお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
まとめ:「就労移行支援はやめとけ」は半分本当、半分は誤解
ここまでの内容を、当事者として調べた立場から整理します。
- 「やめとけ」と言われる理由は事実――給料が出ない・原則2年の制約・事業所の当たり外れ・通所の負担という4つのデメリットは確かに存在する。
- ただし、それは「制度のゴールと自分の状況が合っているか」次第。一般就職を本気で目指し、通所期間の生活費にめどが立つ人にとっては、強力な味方になり得る。
- 制度が合うかどうかは状況次第。一方で私自身は、制度が「向いていなかった」というより、「みっともない」という世間体に縛られて使えなかった側だった。いまはスキマバイトで食いつなぎながら立て直しの途中にいる。
- 失敗の多くは「事業所選び」で起きる。複数の事業所を見学・比較し、就職実績と相性を確かめることが、「やめとけ」を回避する一番の近道。
結局のところ、「就労移行支援はやめとけ」かどうかは、人によって答えが変わります。大事なのは、ネットの評判で判断するのではなく、制度の中身と自分の状況を照らし合わせて、自分のケースで判断すること。この記事が、その判断の材料になればうれしいです。あなたの働き方が、少しでも良い方向に進みますように。
※当サイトでは現在、信頼できる就労移行支援事業所の情報を精査中です。比較・見学に役立つ具体的な事業所のご案内は、準備が整い次第このページに追記します。それまでは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や、複数の事業所への直接の見学申し込みからスタートすることをおすすめします。
この記事の出典(公的情報)
- 厚生労働省「就労移行支援について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001379217.pdf(対象者・標準利用期間2年・サービス内容)
- 厚生労働省「障害者の利用者負担」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html(負担上限月額の区分:0円/9,300円/37,200円)
まだ病院に行けていない人へ
就労移行支援の利用には、自治体の受給者証の手続きが絡み、医師の診断書や意見書を求められるのが一般的です。つまり「就労移行を使うかどうか」の前に、まず受診が先になります。僕みたいに「病院の予約と待ち時間がそもそも無理」というタイプは、オンライン診療から入るのも手です。
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