仕事のミスが続くと、対策を検索する。僕も何度もやった。
出てくるのは、メモを取る、ダブルチェックする、集中できる環境を作る。どれも正しい。正しいけれど、僕のミスはそこでは止まらなかった。メモは10年前から取っている。それでも、共有データが見当たらないという連絡を受け、自分の操作が有力な原因だと考えるところまで来ました。
この記事は、そのとき何が起きていたかを分解した記録です。ADHD傾向があって仕事のミスばかり続いている人に向けて書きます。最後に置くのは、取り消せない操作の前に踏む4つの確認です。診断や治療の話ではありません。診断名がつかないまま付き合ってきた特性を、ミスをした側の人間が自分の崩れ方として分解したものとして読んでください。
ミスが起きる仕組みそのもの(ワーキングメモリ、注意の脱線、過集中の反動)と、汎用の対策を先に知りたい人は、ADHDの仕事のミスが多い原因と5つの具体的対策の方から読んでください。この記事は、そこに載っている一般的な対策では止まらなかったミスの記録です。
先に結論
- ミスの原因を全部「自分の気質」に回収すると、対策を作る場所を間違える。
- 崩れたのは、対象を切り替えた直後、影響範囲を確認しないまま同じ操作を繰り返した場所だった。
- これから置く対策は1つ。取り消せない操作の前に、対象・影響範囲・復旧方法・確認者の4点を確認する。
- 直せない抜けは、直す対象ではなく、前提として運用に組み込む。
- 同じ形の崩れ方が何度も続くなら、努力量ではなく働く条件の方を見る。
共有データが失われた場面で、何が起きていたか
慣れていない作業環境でした。僕は操作の目的と影響範囲を十分に理解できていなかった。
複数の対象を続けて処理し、対象を切り替えた後、影響範囲を確認しないまま削除操作を再実行した。
その後、先に作った共有データが見当たらないと連絡を受けた。
ここで僕は、最初の報告で自分の操作を出し切れず、原因の切り分けを遅らせた。そのあと、自分の操作が有力な原因だと考えて申告し、謝りました。原因は確定していません。それでも、確認せずに取り消せない操作を実行した事実の方は、僕の側に残ります。
「気質のせい」で片づけると、対策を作る場所を間違える
こういうとき、原因は全部自分の注意力に回収されます。また注意力が足りなかった。また確認を飛ばした。10年ずっとこれだ、と。
でも後から分解してみて、ひとつ気づいたことがある。僕がやった削除は、うっかり手が滑った操作ではなかった。自分の中では、作業を進めるための正常な操作としてやっている。迷いがなかったから、確認する必要があるとも思っていない。
崩れたのは、注意力が切れた瞬間ではありません。対象が変わったのに、影響範囲の確認だけを引き継がなかった場所です。操作そのものは同じでも、何に効くかは対象が変われば変わる。そこを確かめないまま、取り消せない操作を実行した。
言い換えると、僕に足りなかったのは操作のやり方を覚えることではなく、取り消せない操作の前に影響範囲を確かめる工程そのものでした。ここは、集中力や気合いでは埋まらない場所です。
ここを分けておかないと、対策が「もっと気をつける」で終わる。もっと気をつけるは、来週には消えている。分けた結果、僕が自分の側の課題として残したのは2つだけでした。影響範囲を確かめずに、取り消せない操作を実行したこと。そして、最初の報告で自分の操作を出し切れなかったことです。
僕の鉄板ルート——謝る側に固定されて、辞める
ここからは、たぶん検索してきた人が一番聞きたくない話だと思う。でも僕にとってはこれが本体です。
僕には決まった型がある。ミスをする。指摘される。先回りして謝る。相手の中で、僕は謝る側の人として固定されていく。関係が固まると息が詰まってきて、最後は自分から辞める。10年、ずっとこれです。
もうひとつ、自分で気づいている癖がある。野球で言うと、内角高めに2、3球続けて投げられた後、外角低めに手が出ない。指摘を受けるとそちらに意識が全部行って、2、3個前に注意されたことの方が抜け落ちる。ミスの後にミスが続くのは、たいていこれです。
言っておくと、メモは取っている。10年前に一度大きくつまずいて、そこは直した。ぐしゃぐしゃのメモが読めないという段階ではない。覚えている。それでも抜ける。だから対策は、記憶や意識の外側に置く必要がありました。
ADHD傾向のミス対策として用意した、不可逆操作の4点確認
そこで、取り消せない操作については、これから次の1つだけを自分のルールにします。同じ崩れ方をする人が持ち出して使えるように、短くしてあります。
取り消せない操作の前に、対象・影響範囲・復旧方法・確認者の4点を確認してから実行する。
削除、リセット、上書き、送信、確定。押したら戻せない種類の操作の前に、次の4つを確認します。
- 対象:今どの案件、どの画面、どのファイルを操作しているか。
- 影響範囲:何が消えるか、何が上書きされるか、何が送信されるか。
- 復旧方法:取り消せるか、履歴やバックアップがあるか、作り直せるか。
- 確認者:影響範囲が分からないなら、実行する前に誰へ確認するか。
影響範囲を自分で言い切れないときに使う確認文も、そのまま決めてあります。
「今からこの対象だけを操作します。すでに完了した別の対象には影響しませんか」
大事なのは、いつ確認するかです。慣れていない操作だけ確認すればいい、という決め方では、今回の場面は拾えません。僕の側に迷いがなく、確認の必要そのものを感じていなかった場面だからです。
だから確認は、慣れているかどうかでは区切らない。対象、画面、権限、操作の目的。このどれかが変わるたびに、もう一度4点を通す。同じ操作でも、対象が変わったらそれは別の操作として扱う。今回引き継がなかったのはまさにここで、僕は対象だけを切り替えて、影響範囲の確認は前の対象のままにしていました。
確認する場面を不可逆操作に限っているのには理由があります。「全部確認する」にすると、確認の回数が増えすぎて、今度は仕事が止まる。戻せる操作は自分の判断で進める。戻せない操作だけ、必ず4点を通す。線をここに引いたのは、続けられる分量にするためです。
それでも抜けるものは抜ける
正直に書くと、細かい抜けが完全になくなるとは思っていません。
何度も繰り返した基本作業では、ミスはほとんど出なくなりました。抜けるのは決まって、慣れていない作業に例外が重なる場面です。ここは僕にとって、直す対象というより、前提として扱う場所になりました。
また、持ち物や忘れ物のような別系統の抜けは、ミス対策とは分けて考えた方が扱いやすい。そちらの対策はADHDの忘れ物対策に分けています。
同じ場面でも、崩れる場所は人によって違う
以前いた職場に、不明点を明確に確認し、回答が出るまで進めない人もいた。
僕は逆でした。分からないと言う前に、すみません、と謝ってしまう。手順が決まっている仕事では、確認してから動く進め方の方が噛み合う場面があると思います。
この話を出したのは、優劣をつけたいからではありません。同じ職場、同じ手順でも、崩れる場所は人によって違うということです。僕は「前提が抜けている場所」で崩れる。他の人は別の場所で崩れる。だから対策も、他人のものをそのまま持ってきても効かない。
同じ崩れ方が何度も続くなら、見る場所を変える
ここまで書いたのは、ミスの起きた場所を自分の側から分解する話です。ただ、同じ形の崩れ方が職場を変えても続いているなら、ミス対策の工夫だけでは追いつかないことがあります。
その場合に見るのは、努力の量ではなく働く条件の方です。担当の範囲が決まっているか。前提を聞ける相手がいるか。口頭ではなく文字で指示が残るか。取り消せる作りになっているか。この4つを書き出してみると、努力量の話とは別の論点が出てきます。
- ミスの起き方そのものと汎用の対策を知りたい場合はADHDの仕事のミスが多い原因と5つの具体的対策。
- 崩れる場所を仕事全体で分けたい場合は発達障害で仕事が続かない時、辞める前に分けること。
- ミスの後に動悸や発作が出ている場合はパニック障害と仕事。
- 相談先や訓練の選択肢まで見る段階ならADHD向け就労移行支援の選び方。
- 自分がどんな環境で崩れにくいかを先に整理したいならADHD×働き方セルフ診断。
よくある質問
ADHD傾向がある人の仕事のミスは、対策すれば減りますか。
種類によります。僕の場合、何度も繰り返した基本作業では、ミスはほとんど出なくなりました。減らなかったのは、慣れていない作業に例外が重なる場面です。ここは対策で消すより、抜ける前提で確認の手順を置く方が現実的でした。
ミスが多いのは自分の性格の問題でしょうか。
全部を性格に回収すると、対策を作る場所を見失います。ミスが起きたら、知らされていた情報、書かれていた手順、自分が飛ばした確認の3つに分けると、対策を置く場所を見つけやすくなります。書かれていない前提が原因だったなら、自分を鍛えるだけでは再発を防ぎにくくなります。
取り消せない操作の前に、毎回4点を確認するのは大変ではないですか。
対象を全部の操作に広げると続きません。この4点を通す範囲は、削除、リセット、上書き、送信、確定のように、押したら戻せない操作だけに絞ってあります。そのかわり、慣れているかどうかでは省略しない。対象や画面が変わったら、同じ操作でも確認し直す。線の引き方はそう決めてあります。
ミスを報告するとき、どう言えばいいですか。
僕の場合は、最初の報告で自分の操作を出し切れず、原因の切り分けを遅らせました。心当たりを聞かれたときは、通常の手順として実行したものも含めて、自分が触った操作を洗い出してから答える。後から情報が増えていくより、切り分けは早く進みます。
操作の目的や影響範囲が分からないまま作業を任されたら、どうすればいいですか。
立場によっては、分かりにくいと言い出しにくい場面もあります。それでも、就業先の情報管理ルールに従い、会社が認めた保管場所で、顧客名・案件名・システム名・個人情報を書かない範囲で、その作業の目的と影響範囲を書き足したメモを作ることはできます。取り消せない操作については、書けない項目が残った時点で、実行前に確認する相手を決めておく方が安全です。
まとめ
ミスが続くと、自分の頭の作りが悪いという結論に一直線で着きます。僕もそこにいました。
でも分解してみたら、崩れたのは注意力が切れた瞬間ではなく、対象を切り替えたのに影響範囲の確認を引き継がなかった場所でした。しかもそこに置いてあったのは、取り消せない操作です。全部を自分の気質のせいにしていたら、この場所は見えないままだったと思う。
だから対策は1つに絞りました。取り消せない操作の前に、対象・影響範囲・復旧方法・確認者の4点を確認する。慣れているかどうかではなく、対象が変わるたびに確認し直す。ミスを全部なくす方法は、僕はまだ持っていません。ただ、取り返しのつかない側の操作については、実行する前に一度止まる場所を決めておくことはできます。


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